【労働者派遣法の改悪】労働者は不安定になり社会の発展にもつながらない

労働者派遣制度を改悪する改悪案が、自民党、公明党などによって衆議院を通過。延長された国会での成立が狙われています。
与党にとっては、過去2回提出して2回ともつぶされたいわくつきの法案です。

安保法制の議論の陰に隠れている感はありますが、労働者派遣法改悪案は、すべての労働者の生活を不安定化させることはもちろんのこと、日本経済の健全な発展も阻害する法案で、大変危険です。

派遣法は、とにかくわかりにくい

派遣法の改悪が行われようとしていますが、どれぐらいの人がこの重大性を理解しているでしょうか。
少し古いデータですが、2014年11月の調査では、派遣法の改正理由は「わからない」が多数を占める結果が示されています。

同調査は、臨時国会で審議されている「労働者派遣法の改正」について、既婚女性505名、未婚女性41名、既婚経験あり独身女性58名、男性9名を対象に実施した。まず、今の派遣法を改正すべきだと思うか尋ねたところ、「わからない」(45.9%)が約半数を占めた。
マイナビニュース 労働者派遣法の改正「よくわからない」が約半数 – 「改正すべき」は約4割 2014年11月18日

なぜわかりにくいのでしょうか。
労働者派遣法の正式名称を見てみましょう。
もともと、労働者派遣法は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」と言いました。

まず、労働者派遣は、労働基準法で禁止された中間搾取です。

何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
労働基準法第6条

そのため、派遣法は、この例外として法律を定めます。つまり、「労働者派遣事業は、この法律に則ってやらないと、労働基準法違反です」という法律ですから、事業について定めた決まりであって、働く人に対する決まりではありません。

その後、派遣切りが社会問題になったため、法律名が変わりました。いまの名前は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。後半に、労働者保護が書き込まれましたが、それでも事業に対する決まりが基本です。

派遣法の中身を見てみましょう。章立ては次のようになっています。

第一章 総則
第二章 労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置
第三章 派遣労働者の保護等に関する措置
第四章 雑則
第五章 罰則

章立てを見てわかるように、事業に対する決まり(第2章)と人に対する決まり(第3章)から構成されています。

つまり、派遣法は、派遣労働者のための法律ではありません。違法な中間搾取の例外として、派遣事業の形を定める法律です。
わかりやすいはずがないのです。

派遣労働者に何が起きるかで理解してみよう

派遣法は、それほど長くない法律です。しかし、法律を読んでも、正直言ってわけがわかりません。細かなことは施行令などで決まっています。また、労働法の基本を理解している人であればあるほど、理解しにくいルールではないでしょうか。
そこで、いったん法律のことを脇において、実際の労働者に何が起きるのか着目してみましょう。

禁止業務の人たち

労働者派遣の認められない業務があります。

  • 港湾運送業務
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 医療関連業務(例外あり)
  • 士業(弁護士や司法書士など、例外あり)

この業務に就いている労働者の場合、法律上は派遣労働者ということはあり得ないはずです。

専門業務の人たち

専門的な技術や知識を持っているからという理由で、専門業種(日雇い派遣が可能な18業務と日雇い派遣禁止の10業務の計28業務)については、特別扱いされます。

  • 派遣受け入れ期間制限がありません。
  • 同じ業務に3年を超える派遣労働者がいて、新たに労働者を雇い入れようとする場合は、派遣労働者に直接雇用を申し込む義務があります。

ただ、なかには「電子計算機、タイプライター、テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作の業務」などというものまで含まれていて、どこまで専門業務か怪しいものもあります。「文書・磁気テープのファイリング」とか言われても、何の仕事かわけがわかりません。

「研究開発」といったものは、大学でも民間会社でも、直接雇用の場合1年~数年契約というところが多いのですが、派遣の場合は受け入れ期間が定められていませんでした。
しかし、今回の派遣法改悪案では、このような専門業種も3年までとされるため、このような人たちが3年でクビにされます。まだ改悪案は成立していませんが、予防的にクビにされる人たちもいる状況になっています。

このような派遣労働者から、「今までどおり働かせろ」という声が出ることになります。しかし、ずっと派遣のままでいいという意味ではないことに留意してください。

ふつうの派遣の人たち

ふつうの部署は、派遣労働者を受け入れられる期間が「原則1年、最長3年」となっています。働いている人が途中で変わろうと、部署として「原則1年、最長3年」です。人ではありません。ここがポイントです。
そのため、大手の工場などでは、「部署替え」と呼ばれる方法で、これをクリアして、工場内でずっと派遣労働者を使う手法が蔓延しています。

簡単に説明します。
A部署とB部署をつくります。
A部署で派遣を受け入れ、受け入れ期間の終了が近づいてきたら、A部署の派遣は全員、B部署へ異動させます。
その状態で半年経過すると、A部署の派遣受け入れ可能期間はリセットされるので、B部署からA部署へ派遣労働者を戻します。
これが部署替えによるクーリングです。

こうすることで、長年働き技術力を蓄積した派遣労働者を安く使い続け、何かあったら放り出すことが可能です。

もしくは、「偽装請負」という方法もあります。
A部署を丸ごと派遣会社に委託し、直接指揮させることで、請負ラインが出来上がります。
もちろん、形式上、派遣会社の社員を指揮命令者として常駐させるものの、実際には元請け会社が仕切ります。
これなら、形式上は派遣ではありません。

しかし、部署替えも偽装請負も、グレーです。
現在の法律のまま、今年10月1日になったとき、派遣労働者が労働局に申告し、この状態が違法であると認定されたら、直接雇用みなし制度が動き出します。

今回の派遣法改悪案は、このみなし制度を回避するための法案です。厚労省が内部資料としてそう書いていましたし、法案の施行日が9月1日であることからもそのことがうかがいしれます。
つまり、今回の派遣法改悪案は、労働者を救済する制度をつぶすための法案です。

このような派遣労働者からは、「派遣のまま使いつぶすな」という声が出ます。これは、直接雇用のチャンスを与えろという要求です。

同一労働同一賃金制度も骨抜き

ふつうの派遣労働者が、長年使い続けられている理由は、「正社員と比べれば安め」「何かあったら放り出せる」の2点です(ですが「期間工と比べれば高め」です)。
そこで、「正社員と比べれば安め」という理由をなくしてしまおうという発想が出てくるのは自然です。

「同一労働同一賃金」推進法案が提出されましたが、与党と維新の党が協議して修正してしまいました。
均等待遇が、均衡待遇に変わっています。
たった一文字ですが、大きな違いです。
つまり、待遇は同じにしましょう(均等待遇)から、待遇はバランスをとりましょう(均衡待遇)に変わってしまっています。これだと、「正社員とはもともと責任の重さが違うから、待遇が違うのは当然」という言い分が通ってしまいます。

派遣先企業からすれば、支払額は一般に、「正社員>派遣社員(派遣会社への支払い額)>期間工」という順番です。派遣会社の派遣労働者への支払額をルール化しない限り、同一労働同一賃金は実効性がないのです。

社会の発展も危うくなるし、下手すると壊れるかもしれない

経営者個人にとって、景気の波に合わせて人件費を抑制したいと考える衝動は抑えることができません。したがって、「いつでもクビにできる労働者」「人件費が安く抑えられる労働者」を雇っておきたいと考えることになります。
しかし、経営者全員がそれをやったらどうなるでしょうか。

労働者側に視点を移してみてください。
いつクビになるかわからない労働者は、会社に対する愛着もないし、将来の不安を抱えて生活するため、消費を低迷させます。
賃金が低い労働者は、十分に子育てもできないし、税収を減少させ、社会保障費を増加させる原因となります。

最近では、2014年7月のベネッセ個人情報流出事件に派遣労働者が関わったことが記憶に新しいところです。このように全体として労働条件が低下すると、労働者のモラルを低下させ、社会不安を増大させます。

このような事態が引き金となって、社会全体が壊れてしまわないようにしなければなりません。
そこで、経営者全員がそれをやらないために、法律で規制するのが、法律に期待される役目です。

しかし、今回の派遣法改悪案は違います。
与党は、雇用安定措置やキャリアアップなどを盛り込んだと言っていますが、「いつでもクビにできる労働者」「人件費が安く抑えられる労働者」を規制することになっていません。これでは、労働者派遣が際限なく広がります。

社会を壊さないためには、「いつでもクビにできる労働者」「人件費が安く抑えられる労働者」の2つを規制するルールをつくり、非正規労働者であっても、当たり前の人生を送ることができる仕組みづくりを実現すべきです。

【労働者派遣法の改悪】労働者は不安定になり社会の発展にもつながらない

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