労災療養中の解雇を緩和する最高裁判断で何が起きるか

6月8日に、最高裁で労災療養中の労働者を解雇できるかどうかに関しての判断がありました。

労災で療養中に解雇されたのは不当だとして専修大の元職員の男性(40)が解雇無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は8日、「労災保険給付を受けている場合でも、補償金を支払えば解雇できる」との初判断を示した。
時事通信 2015年6月8日

これの何が問題なのか見ておきましょう。

労災療養中は原則解雇禁止

業務中に怪我などをすると、それは労働災害(労災)となります。
責任は、使用者にあります。
そこで、労災療養中とその後30日間は解雇できません。

19条にはこうあります。

労働基準法
第十九条  使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
○2  前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

但し書きがあります。
81条を見ましょう。

第八十一条  第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

75条というのが出てきますので、75条も見ておきましょう。

第七十五条  労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
○2  前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

まとめると、こうです。

  • 労災療養中に解雇はできません。
  • 労災療養の費用は、使用者が負担します。
  • しかし、療養し始めてから3年経っても直らない場合には、打切補償をすることで、解雇もできます。

でも現実には労災保険制度がある

ですが、実際問題として、労災保険制度があります。
労災保険に加入していない不届き者の使用者もいますが、社会保険労務士に確認したところ、遡及して加入させることも可能だとのこと。
つまり、直接に使用者が療養費用を負担することは、まずないということです。

最高裁は労災保険による補償を使用者が療養費を負担していると見なす判断

今回の6月8日の最高裁の判断では、労災保険によって補償している場合は、使用者が療養費を負担している状態と見なすことができるという判断をしています。

使用者は、労災保険料を負担していますし、その労災保険から療養費が支払われています。形式上は、そういう議論があっても悪くはありません。
ですが、今回の判断が今後にどう影響を与えるかです。

労災を防ぐためにどうするかの視点が必要

労働災害は、できるかぎりゼロにしなければなりません。労働者の人生を左右するからです。
使用者は、重大事故を発生させないように、労働者の協力も得ながら、環境整備を行っています。
それでもなくならないのが、労働災害です。
労働者が長期療養を必要とするほどの重大な事故もなくなりません。
そのときには、労働者がふたたび復帰できるようにしつつ、安心して療養できるようにするという制度が必要です。
それが、労働基準法における解雇禁止ルールです。
ですが、使用者が療養費を負担しつつ、3年過ぎてもなお治る見込みがないという場合、使用者の費用負担も多額になるので、打切補償の決まりももうけられています。

一方で、労災補償を使用者まかせにしていては、労働者も安心できません。
そのための労災保険制度があります。

今回の最高裁の判断を聞いたら、ブラック企業の社長はきっとこう言うでしょう。
「保険もあるんだし、3年過ぎたらどうせ復職も無理だよ。解雇してもいいじゃないか。」
これでは、最初から労災を防止する姿勢がなくてもいいということになります。

厚生労働省によると、男性のように労災で三年以上療養している労災保険の受給者は一四年三月時点で一万八千二百二十七人。中には休職していない人や既に退職した人も含まれるが、男性のように休職が長期化し、今後、解雇を迫られる人が出てくる可能性がある。
東京新聞「労災休業中の解雇可能 最高裁、初判断差し戻し」2015年6月9日

これだけたくさんの人が影響を受ける可能性があるのです。
その観点から見て、今回の判断を絶対視するわけにはいきません。

労災療養中の解雇を緩和する最高裁判断で何が起きるか

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