地方最低賃金審議会の議事録調査を公表

最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会は6月20日、院内集会を開きました。

2017年度地域別最低賃金に関わる全国すべての地方最低賃金審議会の議事録を情報公開で開示。その結果、最低賃金を決定する経過について記録が不十分であるケースのあることが判明し、公表しました。

調査のきっかけ

地域別最低賃金がどのように決定されたのかについては、その金額、採決結果、未満率、影響率等が厚生労働省によってまとめられています。しかし、何をどう協議して決定したのか、その経過についてはまとめられていませんし、これまで全国規模の調査は行われていませんでした。

そこで、2017年度地域別最低賃金に関わる全都道府県の審議会の議事録を情報公開によって開示請求し、約4500ページの議事録を入手しました。

問題点

国の出先機関であるにもかかわらず、記録の仕方、審議のやり方などは、各局ごとにバラバラです。特に、関係労使からの口頭陳述の希望があっても、受け付けない、中央最低賃金審議会から事業場視察の実施が推奨されているにもかかわらず、実施しないといった閉鎖的な審議会もあります。

例として、東京地方最低賃金審議会の例を見てみましょう。
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意見公示を行った日に運営委員会で意見陳述は実施しないと決めています。
その後、意見書が提出されてくるわけですが、委員らは「ご意見は書面を通じて十分に伝わった」という理由で、意見陳述はしないと決めてしまいます。
なんともやるせない気分です。

口頭陳述を希望する関係労使がいるにもかかわらず、その希望を却下した審議会は、次の6つです。

  • 埼玉
  • 千葉
  • 東京
  • 愛知
  • 三重
  • 宮崎

一方で、金額の結論は、ほぼ中央目安どおりにでる傾向があり、そこにはパターンがあります。
このパターンは、労働側委員に当事者性の高い人が入っていない、また、非公開で進められるといった方式だからこそ、パターンにはまってしまう状態になっています。

「非公開」3つの壁

日弁連会長声明などでも問題視されているように、ほとんど非公開の会議の中で進められます。

会議の非公開

傍聴人を受け付けないで、委員と事務局のみで会議を進めてしまう。
これが第1の壁「会議の非公開」です。
実際に、どの審議回が公開か非公開かを表にしてみました。
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専門部会の第2回以降が具体的な金額審議回ですから、鳥取と和歌山を除きすべて非公開であることがわかります。なお、和歌山は、具体的な金額審議に入った時点で、傍聴者に退場してもらうことにしていますが、傍聴者がいないために公開状態になっていると理解してください。したがって、完全公開は、鳥取だけと考えて良いでしょう。

いろいろな労働組合の人たちが「傍聴させてください」と申し入れをしていますが、ほとんど退けられている状態です。

議事録の非公開

こうした非公開会議であっても、国の機関である以上、議事録は作って公開しなければなりません。ただし、理由あるときは非公開指定して、代わりに議事要旨を公開文書とします。
これが第2の壁「議事録の非公開」です。
公開文書は文書閲覧窓口制度を利用して、無料で閲覧できます。
しかし、非公開指定されると、情報公開法を利用し、有料で開示請求しなければなりません。

ここで、さらに問題が2つ発生します。

議事録のないケースがある

非公開であったとしても議事録をそもそもつくっていないと思われる審議会があります。
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会議が終わって約半年後に情報公開をかけているのに、議事録が不存在であるとしているのですが、まだ未作成であるとすれば職務怠慢ですし、本当に作っていないとすれば大問題です。

専門部会の議事録がない審議会は、次の8つです。

  • 青森
  • 福島
  • 長野
  • 滋賀
  • 京都
  • 奈良
  • 徳島
  • 宮崎

なお、青森については、不存在ではなく、議事録はあるが全部不開示としています。

不開示にしすぎる事務局がある

また、非公開議事録を情報公開した際、担当課が明らかに情報公開法を理解していないケースがありました。具体的には、開示の際は、黒でマスキング以外は許されていないのですが、開示文書に手書きで書き加えがありました。

先ほど述べた青森はもちろん、その他にも、恐らく不必要であろうと思われる不開示も多数あります。
具体的な提案金額を不開示にする、弁護士会会長声明の「弁護士会」の部分を不開示にするなどです。

たとえば、こちらをご覧ください。これは、千葉地方最低賃金審議会の第2回の専門部会の議事録を一部です。
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マスキングが1カ所あります。
しかし、労働側の高柳さんが要請書で出したけれども、なになにとしてはリビングウェッジという目標で目標940円を出していると言っていますので、この不開示部分は文字数も考え合わせると「連合千葉」でしかありません。
このようなものを不開示にすることの何の意味があるでしょうか。

このように不開示にして問題があると感じれば、審査請求しなくてはなりません。こうなると時間がかかるので、せっかくの議事録も来年度に生かしにくくなります。
年度初めに審査請求書を提出したところ、6月中旬に受け付けて審査を開始する旨の通知が来たばかりです。

記録に残さないための会議が行われている

このような、会議の非公開と議事録の非公開はいままでにも知られていました。
しかし、今回の全国調査で明らかになったのは、第3の壁「別室会議による非公開」です。

ここでは、東京の第4回専門部会議事録を見てみたいと思います。
全部で4ページです。

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日時や場所、出席者など定型どおりから始まります。
定数を満たしていること、非公開とすることが決まり、前回、前々回の議事概要が配られてチェックされます。続いて、他局の結審状況は、毎日事務局に入るので、その確認になります。

2ページ目に行きましょう。

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他局の結審状況の確認があります。追加資料がないか確認されます。
具体的な金額審議を始めると宣言された後、控え室が確認されます。

労働者委員は13階。
使用者委員は11階。

問題は3ページからです。

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「公使会議」「公益委員」「公益委員協議」という文字が並んでいます。
おそらく労使各委員は、控え室と会議室を行ったり来たりさせられているのでしょう。

最後に全員そろったところで、明日採決すると宣言されてしまいます。
最後に明日の時間と場所の確認です。

4ページ目に行きます。

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明日の会議の労使委員の控え室の確認で、終わっています。

このような会議をもし仮に傍聴できたとしたならば、おそらく傍聴者は、「傍聴者控室」で缶詰にされるでしょう。個別折衝の時間は、何も見聞きできないはずです。

つまり、傍聴者のいるであろう部屋とは違うところで会議が進行するという非公開方式です。
これなら、仮に真実とは異なる記録がつけられたとしても誰もわからないわけです。

非公開審議は民主主義の根本に関わる大問題

現在の地域別最低賃金は、ブラックボックスの審議で金額だけが提示されます。
そのためニュースも、「過去最高額の何円」とタイトルをつけるしかありません。
ですが、その経過を知ることができたなら、きっと別のタイトルがつくはずです。

専門部会の委員は、わずか9名です。
選挙で選ばれた人ではありません。

たとえば、先ほどの東京の専門部会の場合は、この方たちです。
公益委員は、大学の先生や弁護士のケースが多いようです。

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こうした人たちが、その都道府県民すべての生活水準や産業のあり方まで決めてしまうことになります。

金額の根拠の記録がない審議会も複数ありますが、そうした審議会の場合、歴史的検証ができません。
最近では、当事者の意見を聞いたり、委員に入れたりして政策を決めていくことが当たり前になっています。

個別の企業の情報が流れるから非公開にしているともっともらしい理由を述べる労働局もありますが、議事録調査からは、そういうケースはありません。仮にあったとしても「とある会社では」とか「こんな産業の会社では」とか「どこそこ市の会社では」という表現をとれるはずです。

最低賃金のあり方、金額は、みんなで議論し、影響をダイレクトに受ける人の意見を聞きながら決定すべきです。それが民主主義のあり方というもののはずです。

全都道府県の議事録をもとに連載を始めています。ぜひお読みください。
最賃議事録全国調査(1)へ進む

参考:レイバーネット「隠蔽となれ合いで最賃を決めるな!〜「時給1500円をめざす院内集会」開かれる」

地方最低賃金審議会の議事録調査を公表

最賃大幅引き上げ院内集会

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コメント

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